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今も昔も子どもたちは落語が大好き

「おやこ寄席」を主宰する落語家 桂文我さん

「おやこ寄席」を各地で開き、子どもたちに落語の楽しさを伝えてきた桂文我師匠。
その舞台裏には、周到な思索と真剣勝負の準備がありました。



子どもも落語は分かるはず

 子どもたちに落語のおもしろさを知ってもらいたいと、桂文我さんが始めた「おやこ寄席」が12年目を迎えています。最初のころは、分かってもらえるだろうかと不安もありましたが、今ではおやこ寄席の依頼は当初の約10倍にふえているそうです。現場を収録したライプCDを聞くと、子どもたちが文我さんの芸に引き込まれ、大笑いをしていることが分かります。
 桂文我さん「私自身、幼稚園の時に落語を聞いてもまったく分かりませんでしたが、小学3年生の時、ラジオで落語を聞いておもしろいと思ったんですね。これが縁で落語に興味を持ち、落語家にまでなったのです。
 ある時、先輩が子ども向けの寄席で落語をやったのですが、子どもたちがじっと座っていない、おしゃべりはする、奇声を発して話を聞いてくれない、というわけで、『子どもに落語は無理』と言うのを聞きました。でも、自分の経験から、子どもでも落語は分かるはずと思いましたね。これが"おやこ寄席"を始めるきっかけになったのです」


子どもたちを集中させる万全の準備

 「おやこ寄席」を始めるチャンスがめぐってきました。三重県四日市市にある子どもの本の専門店「メリーゴーランド」から、子ども用の落語はないですかと依頼を受けて、子ども向けの落語を考えることになったのです。
 「最初に、メリーゴーランドの店主や絵本作家と徹底して話し合いました。失敗する要素を洗い出したのです。これがよかったですね。そこで決めたことは、小学生以上の子どもを対象にして、親150名、子ども150名を限度とすること。そして、大人と子どもの席は分けることにしました。
 いっしょだと、親は子どもの様子が気になりますし、『おもしろいか?』などと声をかけがちです。子どもは集中できませんし、返事をしているうちに話が進んで分からなくなってしまいます。落語を好きな子をふやしたいのに、気が散る状況では、落語嫌いをふやしてしまいます。失敗したら、きっぱりやめようと思っていますから、こちらの要望が聞き入れられない場合は、依頼を受けないようにしています。
 子どもたちの目を一点に集中させるために、舞台づくりに3時間はかけますね。会場の造りはさまざまですが、落語家に集中できるように、バックを金屏風にして寄席らしい舞台をつくります。お嚥子も生で演じるようにセットします。こうして何が始まるのだろうという期待感を持たせるのです。
 いきなり落語は始めません。30分から1時間かけて、落語とはどんなものかを語り、扇子と手ぬぐいの使い方を説明します。子どもたちの反応を見ながら、今日はこの路線でいこうと決めます。子どもたちの拍手や笑いの感じで分かるものです。たとえば、今日は我慢の足らない子どもが多いと感じたら、コントに近い落語にしていきます」


人気の三本柱はコント・SF・ミステリー

 演目は「まんじゅうこわい」「じゅげむ」「時うどん」など、大人が知っている落語です。落語の前の説明段階で、子どもたちの心をしっかりとつかみ、落語を聞く態勢を整えているので、スムーズに落語を始めることができます。
 「おもしろいと思うところが、大人といっしょですね。もちろん、現在使われていない言葉は説明します。たとえば、お代官さまだったら、えらい人。腰元は今でいうお手伝いさんのことです、という具合に。でも、あまり説明しすぎると、子どもたちの想像力を摘み取ってしまいます。このさじ加減が難しいところです。
 子どもに人気の三本柱は"コント・SF・ミステリー"です。『時うどん』はお金をごまかすところがおもしろいといいますね。
 『どうぎり』という話も人気があるんですよ。胴でまっ二つに切られた人間が就職する話なんです。上半身は上半身だけで仕事ができる風呂屋の番台で働き、下半身は足で麩を踏む仕事につくという。
 昔も今も、本当は子どもの感性は変わっていませんね。『おやこ寄席』をとおして、落語の楽しさ、日本語のおもしろさを子どもたちにもっと知ってほしいと思います」

文我さん_雑誌「灯台5月号より」  


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