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“江戸歩き”を楽しむためのコロンブスの卵的発想
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先日、たまたまある若い建築家と話をしていて、「東京って、新しく作られた町のようだけど、道の張り方とか町並みの構造は意外に江戸時代から変わってないんですよねえ」という話題になったのだが、確かに時代小説などに出てくる土地を歩いてみると、描かれているシーンのイメージがリアリティを持って現前に現われることも少なくない。むろんそうでない場合もあるわけだが、それはそれで町並みの変遷が忍ばれて面白いし、そんな面白がり方が一冊の本にまとめられた例もいくつかある(最近だと、たとえば、宮部みゆきの『平成お徒歩日記』など)。
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前置きが長くなったが、本件『江戸東京重ね地図』は、そうした“江戸歩き”の楽しみをより一層深めてくれる一作である。簡単にいえば、江戸時代の古地図(安政三年実測)と現代の東京地図とを重ね合わせ、透明度を調整することにより江戸と東京の町のあり様を比較できる、というものだ。発想自体はすこぶる単純だが、しかしそこで発生する楽しさ、面白さを考え併せれば、コロンブスの卵的発想と賞賛しても、大袈裟ではないと思う。
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膨大な資料をもとにした豊富な検索項目も芸備
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ちなみに地図の範囲は、いわゆる御朱引き内で、“朱引き”についての説明は長くなるので割愛するが、概ね西は山手通りのやや外側、東は江戸川のやや内側と考えればよいだろう。で、この範囲内が、2千分の1〜4千分の1の範囲の縮尺で、自由に拡大縮小できる。江戸の地図上には、旧幕引継文書や尾張屋版江戸切り絵図などの町方地図はじめ膨大な資料から採られた地名町名、大名屋敷、公儀、寺社などが掲載されており、そこに現代の東京地図を透かして見ると、江戸の町並みに現代の町並みがこつ然と現れるという仕掛けだ(個別の土地について作成された切り絵図と江戸/東京の全体図の中の該当する土地の見比べも可能)。
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また本件では、電子地図として、約2万件の検索データを持つ検索機能も装備されている。検索条件は、先に挙げた要素(地名町名〜寺社)はもちろん、飲食店や老舗、観光名所や岡場所を含む遊び楊など“江戸文化”からも場所を探すことができるほか、「鬼平検索」ができるのが面白い。これはいうまでもなく、池波正太郎「鬼平犯科帳」に出てくる土地などを検索する機能だが、文春文庫版を底本に、各巻各話のシーンから地図を検索できるというもの。鬼平ファンや鬼平で時代劇に入門する読者には、ストーリーや人間関係の機微を楽しむだけでなく、池波正太郎の筆による江戸の町並みを想像の中で歩いてみるという楽しみ方の手助けもしてくれる。
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(文/青木 修)
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